筋膜リリースや筋膜の施術を受けた後に、体が重く感じたり、眠気やだるさなどの倦怠感を感じる人は意外と多いものです。
この「だるさ」には、身体が正常な状態へ回復する過程で起こるポジティブな反応と、不適切な刺激によるネガティブな反応の2種類が存在します。
この記事では、理学療法士の視点から、筋膜リリース後に生じるだるさの主な原因を科学的根拠に基づき解説し、具体的な対処法や予防策まで、分かりやすく説明します。
目次
筋膜リリース後にだるさを感じるのはなぜ?主な原因を解説
筋膜リリース後に現れるだるさの正体は、主に二つ考えられます。
一つは、身体が良い状態へ向かう過程で一時的に生じる「好転反応」です。
もう一つは、強すぎる刺激によって筋肉や筋膜が傷つき、炎症を起こしてしまう「もみ返し」です。
これらは似たような疲労感として感じられることがありますが、身体の中で起きている現象は全く異なります。
だるさの原因がどちらであるかを理解することは、その後の適切な対処を選択する上で非常に重要です。
身体が回復に向かうサイン「好転反応」とは?
好転反応は、筋膜の癒着が解放されることで、これまで滞っていた血流やリンパの流れが急激に改善するために起こります。
血行がよくなると、蓄積されていた疲労物質や老廃物が一気に全身を巡り始め、それを身体が処理しようとする過程で一時的にだるさや眠気、軽い頭痛などの症状が現れるのです。
これは、身体が本来の機能を取り戻し、正常な状態へと再調整している証拠であり、一種のデトックス反応と捉えることができます。
症状は不快に感じるかもしれませんが、身体が回復に向かっているポジティブなサインであり、通常は時間の経過とともに自然に解消されます。
強い刺激による炎症「もみ返し」が原因の場合
もみ返しは、施術による圧が強すぎたり、角度が不適切だったりすることで、筋線維や筋膜、毛細血管が損傷して炎症を起こしている状態を指します。
これは身体の回復過程ではなく、一種の怪我に近いネガティブな反応です。
特に、硬く凝り固まった部位に対して無理な力を加えると、組織がその刺激に耐えきれずにダメージを受けてしまいます。
その結果、施術した箇所に鋭い痛みや熱っぽさ、腫れなどが生じ、だるさを感じます。
これは身体からの危険信号であり、施術が身体にとって過度な負担であったことを示しています。
適切な知識や技術を持たない施術によって引き起こされることが多い現象です。
好転反応ともみ返しの症状を見分けるポイント
好転反応ともみ返しを見分けるには、症状と持続期間に注目します。
好転反応によるだるさは、心地よい倦怠感や眠気を伴い、身体全体が温かく感じるなどポジティブな感覚を伴うことが多いです。
症状は通常1〜3日程度で自然に軽快し、その後は身体がスッキリと軽くなる感覚が得られます。
一方、もみ返しは施術部位に局所的な鋭い痛みが残り、「アザを押したような痛み」と表現されることもあります。
熱感や腫れを伴うこともあり、症状が3日以上長引く、あるいは悪化する傾向が見られます。
不快感が強く、身体を動かすのがつらくなる点が大きな違いです。
筋膜リリース後にだるいときの、具体的な対処法
筋膜リリース後にだるさを感じた場合、それは身体が変化し、回復しようとしているサインです。
この時期に適切なケアを行うことで、回復をスムーズに促すことができます。
だれでも自宅で簡単にできる対処法をご紹介しますので、ぜひ実践し、症状の早期改善につなげましょう。
常温の水や白湯で水分を補給する
施術後は血行が促進され、体内の老廃物が排出されやすい状態になっています。
このタイミングで十分な水分を摂取することは、老廃物を尿として体外へ効率良く運び出すために非常に重要です。
冷たい水は内臓に負担をかけ、血管を収縮させる可能性があるため、身体を冷やさない常温の水や白湯が最適です。
筋膜自体も水分の豊富な組織であるため、水分補給は筋膜の柔軟性を保ち、組織の修復を助けることにつながります。

コーヒーや緑茶などのカフェイン飲料やアルコールは利尿作用が強く、かえって水分不足を招くことがあるため、だるさを感じている際はなるべく避けるのがおすすめです。
体を冷やさず、安静に過ごす
好転反応によるだるさを感じるときは、体が組織の修復と再調整にエネルギーを集中させている状態です。
この重要なプロセスを妨げないよう、激しい運動や仕事などで身体に負荷をかけることは避け、できるだけリラックスして過ごすことが大切です。
特に、身体を冷やすと血行が悪くなり、回復が遅れる原因となります。服装を工夫したり、ブランケットを使用するなどなるべく体を冷やさないように心がけ、ゆったりと過ごしましょう。
血行を促進する、ぬるめのお湯での入浴
だるさを和らげ、回復を助けるために、ぬるめのお湯での入浴は効果的です。
38〜40度程度でゆっくり入浴することで、副交感神経を優位にして心身をリラックスさせ、全身の血の巡りをよくすることができます。
筋肉の過度な緊張が和らぎ、疲労物質を排出するにも効果的です。
ただし、施術直後の入浴や、42度以上の熱いお湯は交感神経を刺激し、身体に余計な興奮や負担を与える可能性があるため注意が必要です。
もし、もみ返しによる熱感や強い痛みがある場合は、入浴で炎症が悪化することもあるため、症状が落ち着くまではシャワーで済ませるなどで対応しましょう。
質の良い睡眠を十分にとる
睡眠は、体を回復させるための最も重要な時間です。
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、日中に受けたダメージや筋膜リリースの刺激によって変化した組織の修復・再生が活発に行われます。
だるさを感じるときは、身体が普段以上に休息を求めているサインです。
質の良い睡眠を十分にとることで、この修復プロセスが最大限に促進され、症状からの回復が早まります。
就寝前はスマートフォンやパソコンの画面を見るのを控え、部屋を暗くして静かな環境を整えるなど、深く眠るための工夫をすることで、翌朝の身体の軽さを実感しやすくなります。
筋膜リリース後のだるさはいつまで続く?症状の期間と注意点
筋膜リリース後に感じるだるさがいつまで続くのかは多くの人が気にする点です。
この症状の期間は、その原因が好転反応なのか、もみ返しなのかによって大きく異なります。
期間の目安を知っておくことで、過度に心配することなく適切な対応をとることができます。
また、症状が続く期間中の過ごし方にもいくつかの注意点があります。
好転反応によるだるさは、通常1〜3日で治まる
身体が良い方向へ向かう過程で生じる好転反応の場合、だるさや眠気といった症状は一時的なものです。
血行が改善し、体内の老廃物が排出されるまでの期間、つまり施術後1日から、長くても3日程度で自然に治まるのが一般的です。
個人差はありますが、時間が経つにつれて症状が軽くなり、その後は以前よりも身体が軽く感じられたり、関節の可動域が広がったりといったポジティブな変化を実感できることが多いです。
この期間は身体の回復期と捉え、安静に過ごすことが望ましいです。
症状が長引く場合は、医療機関の受診も検討しよう
もし、だるさや痛みが3日以上経過しても改善しない、あるいはかえって悪化するような場合は、好転反応ではなく、強いもみ返しや他の問題が起きている可能性があります。
特に、施術部位に明らかな熱感や腫れ、動かせないほどの鋭い痛みが続く場合は、筋組織が強く損傷していることも考えられます。
そのような状態を放置せず、整形外科などの医療機関を受診し、医師の診断を受けることを検討してください。
ごく稀に、筋膜リリースの刺激がきっかけで、潜んでいた他の疾患の症状が現れるケースもゼロではありません。
だるさが強いときのNG行動:飲酒や激しい運動
だるさを感じている期間は、身体が回復と修復に集中している大切な時期です。
このときに飲酒をすると、アルコールを分解するために肝臓に負担がかかり、本来行われるべき老廃物の処理や組織の修復が後回しになってしまいます。
また、アルコールには血行を促進しすぎる作用もあり、炎症を悪化させる可能性も否定できません。
同様に、ランニングや筋力トレーニングなどの激しい運動も、回復中の身体にさらなる負荷をかけ、回復を遅らせる原因となります。
症状が完全に抜けるまでは、これらの活動はなるべく控えましょう。
だるさを防ぐ!筋膜リリースのポイント
筋膜リリース後の不快なだるさは、いくつかのポイントを心掛けることで、未然に防いだり、程度を軽くしたりすることが可能です。
施術の効果を最大限に引き出しつつ、身体への不要な負担を避けるためには、施術を受ける側にもできることがあります。
これから紹介する予防策を実践し、より安全で快適な筋膜リリースを体験してください。
施術の前後にはコップ一杯の水を飲む
施術を受ける前から身体の水分が満たされていると、筋膜組織の滑りが良くなり、より少ない力で癒着を剥がすことが期待できます。
これにより、施術による組織へのダメージを最小限に抑え、強いだるさやもみ返しのリスクを低減できます。
また、施術後も同様に水分を補給することで、剥がれた筋膜から遊離した老廃物の排出をスムーズに促し、好転反応が強く出過ぎるのを防ぎます。
施術の前後30分〜1時間以内にコップ一杯程度の常温の水を飲むことを習慣にすると、施術の効果を高めると同時に、身体への負担を軽減できます。
痛気持ちいい程度の圧で無理なく行う
筋膜リリースにおいて、「痛み=効果」という考え方は誤解です。
強すぎる圧力は、身体に防御反応を引き起こさせ、筋肉をかえって硬直させてしまいます。
さらに、筋繊維や毛細血管を傷つけ、もみ返しの直接的な原因となります。
最も効果的なのは、「痛いけれど気持ちいい」と感じる範囲の圧です。
この感覚は、筋膜の癒着が適切にリリースされているサインでもあります。
セルフケアで行う際も、施術を受ける際も、決して痛みを我慢しないことが重要です。
強い痛みを感じたら、すぐに圧を弱めるか、施術者にその旨を伝えましょう。
長時間のやりすぎは身体の負担になるため控える
特定の凝りが気になるからといって、同じ部位を長時間にわたって集中的に刺激し続けるのは避けるべきです。
過剰な刺激は、その部位の組織にとって大きな負担となり、炎症を引き起こすリスクを高めます。
セルフケアの場合は、1つの部位につき3〜5分程度を目安にし、全身をバランス良くケアすることを心掛けてください。
専門家による施術においても、時間が長ければ長いほど良いというわけではありません。
身体の状態に合わせて、最適な時間と刺激量で施術を行うことが、結果的に安全で高い効果につながります。
筋膜リリースのだるさ【まとめ】
筋膜リリース後に経験するだるさには、体が回復へ向かう過程で生じる「好転反応」と、過度な刺激による組織の損傷である「もみ返し」の2つの主要な原因があります。
好転反応は血行が改善し老廃物が排出される際に起こる一時的な現象で、1〜3日で自然に軽快します。
これに対し、もみ返しは不適切な施術による炎症であり、痛みが長引く特徴があります。
だるさを感じた際は、水分を十分に摂取し、身体を冷やさず安静に過ごすことが基本的な対処法です。
また、施術前後の水分補給、「痛気持ちいい」と感じる圧の維持、長時間の施術を避けるといった心掛けが、不快な症状の予防につながります。
投稿者プロフィール

- 【青山筋膜整体 理学BODY WEB編集長】理学療法士歴10年以上 総合病院⇨介護・予防分野⇨様々な経験を経て独立。臨床で得た知識をもとに、書籍の執筆・WEB発信・セミナー講師など分野問わず活動中。
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