バドミントンやテニスは怪我が多く、特に肩の筋肉や腱の損傷が多い傾向は避けられません。
痛みが出ている部分をマッサージしたりと、様々やっても完全に治らない場合も多いです。
その治らない痛み、実は、身体の硬い部分を改善することで肩の痛みは改善できる場合も多いです。
つまり、肩の動きは複数の関節が関係していて、様々な関節が動くことで1箇所の負担を軽減しています。
たとえば、肩甲骨の動きが悪かったら、肩や背骨の動きでかばうので痛みやすくなるわけです。
そこで今回は『バドミントンやテニスで肩が痛くなる3つの原因と対処法』に絞って理学療法士が解説していきます。
目次
バドミントンやテニスで肩が痛い時に考えられる4つの疾患名
肩に痛みを感じやすい場面は、スマッシュやサーブを打つ時のような腕を高く挙げて振り下ろすような動作が多いです。
原因はおもに以下の4つが挙げられます。
- 腱板断裂、腱板損傷
- SLAP(スラップ)損傷
- Bennett(ベネット)病変
- 肩甲上神経障害
各疾患がどんなものか、痛くなるメカニズムも含めて詳しく解説していきます。
腱板断裂・腱板損傷
腱板とは、肩の周りを取り囲むように位置する4つのインナーマッスルを総称してそう呼びます。
そして、腱板のどれかが断裂、および損傷することを『腱板断裂』あるいは『腱板損傷』と呼びます。
特徴としては、中高年の発症が多く、腕を真っ直ぐ身体の前に、あるいは真横に挙げる動きが難しくなります。
サーブやスマッシュで損傷(or断裂)することが多いのは、肩の上側を通る棘上筋と言う筋肉です。
サーブやスマッシュのインパクトの瞬間のように腕を最大限に振り上げた時に損傷(or断裂)します。
肩関節は腕の骨である上腕骨とその受け皿となる肩甲骨から構成されています。
棘上筋は腕を振り上げた時に上腕骨と肩甲骨の間に挟まれやすく、その際に断裂、損傷してしまいます。
SLAP損傷
腕の力こぶを作る上腕二頭筋という筋肉が肩の付け根に付いています。
SLAP損傷とは、上腕二頭筋がねじれたり強く伸ばされることで、腱や関節の一部が損傷することを指します。
肩の前側に痛みがあれば『SLAP損傷』の可能性があります。
肩関節は後ろ側は安定していますが、前側は不安定な作りになっています。
肩は後ろ側が硬くなると前側がより一層不安定になるという特徴があり、その状態で肩を動かすことがSLAP損傷を起こす原因になります。
Bennett病変
二の腕の上腕三頭筋という筋肉が肩の後ろ側に付いています。
この筋肉はサーブやスマッシュを打つ際、大きく腕を振り上げることで強く伸ばされます。
何度も強く伸ばされることで、腱が付着する部分の骨が骨棘と呼ばれるトゲのように変形することを『Bennett病変』と呼びます。
肩の後ろ側に痛みがあればBennet病変の可能性があります。
それが何で痛いのかと言うと、骨棘がある状態でサーブやスマッシュを繰り返すと周りの筋肉や神経がトゲですれて摩擦を起こします。
それが原因で炎症や神経痛を引き起こすからです。
肩甲上神経障害
肩甲骨の背中側にある棘上筋と棘下筋と言う筋肉の動きを支配している神経が肩甲上神経です。
この神経が骨と筋肉の間ですれて炎症を起こしたり、圧迫されて血流が悪くなることを『肩甲上神経障害』と呼びます。
肩甲上神経は肩甲骨の外側にある棘下切痕と呼ばれるトンネルをくぐって肩甲骨の外側へ向かって伸びています。
サーブやスマッシュのように腕を大きく振り上げる際、肩甲骨は大きく外側へ動き、棘下切痕に下から突き上げられる形で神経が伸ばされます。
それを繰り返すと神経が炎症を起こしたり圧迫されるため、肩甲上神経が支配する棘上筋、棘下筋の動きを弱くします。
棘上筋と棘下筋は肩を安定させる重要な筋肉です。
これらが上手く働かないと、肩は不安定になり、肩を動かす時に腱や骨を傷つけるため、痛みを起こす場合があります。
バドミントンやテニスで肩が痛い場合の3つの原因
サーブやスマッシュは、上手く体を使えないと腱板断裂やSLAP損傷へとつながり、痛みを起こす原因になります。
実は、肩を痛める主な原因は以下、肩以外の3箇所が硬いからだと言えます。
- 胸が硬い
- 肩甲骨周りが硬い
- 肩周りが硬い
なぜそれぞれが肩へ負担をかける原因になるのか、詳細に解説していきます。
胸が硬い
スマッシュやサーブを打つ際、腕を大きく振り上げますが、この時必ず胸を大きく開いているはずです。
胸の周りが硬いと胸を大きく開けないので、腕も大きく振り上げることはできません。
すると、肩を余計に大きく動かして足りない分を補わないといけません。
肩がいつも以上に大きく動いており、繰り返し動かすことで筋肉や腱を損傷してしまう可能性があります。
肩甲骨周りが硬い
腕を動かす時、肩甲骨も腕に合わせて一定の割り合いで動いています。
ですが、肩甲骨が硬いと腕に合わせて動くことができなくなり、一定の割り合いで動くことはできません。
たとえば、腕を90度挙げる時、上腕骨が60度、肩甲骨が30度動くとします。
肩甲骨が硬い場合、10度しか動けないとすると、残りの80度を上腕骨が動かなくてはいけず、それだけ肩に加わる負担が大きくなります。
肩周りが硬い
サーブやスマッシュのような大きく力強い動きには、肩の柔軟性が必要です。
同じ動きをしたとしても、肩が硬いと筋肉や腱には大きく伸ばされる力が加わり、損傷したり炎症を起こして痛みにつながります。
バドミントンやテニスで肩が痛い場合の3つの対処法
日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合などは、まずは整形外科を受診して医師の判断を仰ぎましょう。
具体的には以下のような症状に当てはまる場合は受診を検討しましょう。
- じっとしていても痛みがある
- 腕にしびれがある
- 眠れないくらい痛みがある
- 肩を動かすと痛みがある
- 肩が熱い感じがする
- 痛みが次第に強くなって経過している
- 以前に原因となる疾患の診断を受けている場合
これに当てはまらない場合は、肩や肩甲骨の硬さを解消することで痛みも解消できる可能性があります。
背骨、肩甲骨、上腕骨、それぞれの動きを出すための運動を紹介しますので、痛みが起こらない範囲で試してみてください。
背骨の動きを出す運動
- 横向きに寝る
- 上側の太ももをお腹に近づけるように曲げ、下側は後ろに伸ばす
- 後ろを振り向くようにして胸を大きく開いていく
- 息を吐きながら、動かないところまでいったら元に戻る
- 1〜4を繰り返す
肩甲骨の動きを出す運動
- 椅子に腰かける
- 両手を真横に開き、肘を90度曲げる
- 両手を合わせるように腕を前に動かす(肩甲骨を開くように)
- 合わせたら、体の真横まで腕を戻す(肩甲骨を寄せるように)
- 1〜4を繰り返す
上腕骨の動きを出す運動
- 椅子に腰かけ、テーブルの上に両肘をつく(肘をつく位置は肩幅)
- 肘をついたまま、両手を近づけたり離したりする
- 2を繰り返す
関連記事:肩の痛みを治した事例多数!3回以内の改善にこだわる整体院『理学ボディ』とは?
まとめ
もし、腱板断裂やSLAP損傷で痛みが出ているとしたら、整形外科を受診し適切な治療を受けるべきです。
ですが、そうではなく体が硬いことが原因で肩に負担をかけているとしたら、自分で解決できる痛みかもしれません。
本記事を読み、自分はどこが硬いのかを考えていただき、紹介した運動の中でも自分に当てはまる部分を中心に試してみてください。
投稿者プロフィール
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理学療法士の国家資格を取得後、都内のスポーツ整形外科クリニックで医師と連携しつつプロスポーツ選手や箱根駅伝選手などを担当し、技術を磨いてきました。
その過程でイタリアの医師が考案した国際コースである『Fascial manipulation(筋膜マニピュレーション)』のコースを修了しています。
筋膜を通じて痛みに悩まされている人を救いたいです。