枕なしで寝るとどうなる?理学療法士がメリット・デメリットを徹底解説!

この記事を監修している人:木城 拓也(理学療法士免許所有)

プロ選手や箱根駅伝のケアを担当、痛みの原因に向き合う世界レベルの筋膜施術『Fascial manipulation(筋膜マニピュレーション)』を修得。整体院は全国90店舗超、「通わせない整体」として3回以内の最短で改善するアプローチを目指すプロフィール詳細→

木城先生

「枕なしで寝るとどうなるの?」
「枕を使わないで寝るほうが体に良いの?」

こうした疑問を持ち、実際に“枕なしで寝る”ことを試そうか迷っている人は少なくありません。
最近では SNS やメディアで「枕を使わないで寝ると首が楽になる」「ストレートネックにいい」といった情報も多く、“枕なし睡眠”への関心が高まっています。

しかし、理学療法士の視点から見ると、枕なしで寝るとどうなるかは、個人の骨格や姿勢によって大きく変わるというのが本当のところです。

一部の人にとってはメリットがありますが、多くの場合はデメリットのほうが大きく、身体の不調につながりやすい点に注意が必要です。

本記事では、体の専門家である理学療法士が、「枕を使わずに寝るメリット・デメリット・快眠につながる枕の選び方」 を、わかりやすく解説します。

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枕なしで寝ることで起こりうる、体の不調

一般的には「枕なしで寝るのは良くない」といわれることが多いですが、それには明確な理由があります。
枕は本来、寝具と首の隙間を埋めて“立位に近い自然な姿勢”を保つための道具です。支えが失われると、身体にはさまざまな悪影響が生じます。

以下では、枕を使わずに寝ることで起きやすい代表的な不調を紹介します。

寝違えの原因になる(首への負担)

首の骨(頚椎)は、本来なだらかな前カーブを描いています。

枕なしで寝る 頸椎
しかし枕を使わないで寝ると、仰向け時に首が支えを失いカーブが崩れやすくなるため、筋肉や筋膜が長時間引き伸ばされたままとなってしまいます。

その結果、

  • 起床時のつらさやだるさ、違和感
  • 首の動きにくさ
  • 寝違え

につながる可能性があります。

さらに首の不安定さは肩や背中にも連鎖するため、首・肩こり・背中の張り・腰痛 など、全身の不調の原因にもなります。

寝違えで肩や背中が痛くなる人もいるので注意が必要です。

睡眠の質が低下する(寝返りがしにくい)

人は睡眠中、20回以上の寝返りを打つことで血流や体温を調整しています
しかし枕がない場合、頭の位置が安定しないため寝返りがスムーズにできません

特に横向き寝になると、

  • 肩幅の分だけ頭が落ちる
  • 首が横に折れ曲がり筋肉が緊張する

といった負荷がかかりやすく、深い睡眠を妨げてしまうことがあります。そのため、中途覚醒が増え、寝ても疲れが取れない と感じやすくなります。

いびきをかきやすくなる(気道の圧迫)

仰向けで枕を使わずに寝ると、頭の位置が低くなり、人によって顎が上がりやすくなります。
その結果、舌が喉へ落ち込み気道が狭くなる「舌根沈下」が起こりやすく、いびきの原因となってしまうケースが頻発します。

特に以下の人はいびき悪化のリスクが高まります。

  • 肥満傾向
  • 顎が小さい
  • 鼻づまりがある

気道が狭くなると呼吸が浅くなり、睡眠の質も低下してしまいます。

むくみや首のシワができやすくなる(顔の位置の問題)

枕を使わず頭が低い状態で長時間過ごすと、重力により水分が頭部に溜まりやすく、翌朝の顔のむくみが生じやすくなります。

また、首の角度が不自然になると、

  • 首の深い折りジワ
  • 皮膚のたるみ

ができやすく、美容面でもデメリットが大きくなります。

枕なしで寝るメリットは?理学療法士が教える2つの効果

姿勢や骨格の特徴によっては、枕を使わないほうが筋肉の緊張が解け、リラックスできる場合もたしかにあります。

どのようなケースで枕なしがメリットに働くのか、理学療法士の視点から考えられる具体的な効果を2つ紹介します。

ストレートネックの負担軽減

本来あるべき首の湾曲が失われ、頚椎が真っ直ぐになってしまった状態をストレートネックと呼びます。

ストレートネック

この状態の人が高さのある枕を使用すると、首が強制的に前に押し出され、かえって苦しさを感じてしまいます。

そのため、あえて枕を使わないことで首がフラットな状態になり、頚椎への圧迫感が減るケースがあります。

ただし、これはあくまで一時的に楽に感じるだけであり、根本的な骨格改善にはならない点に注意しましょう。

根本改善には、専門家の指導のもとで判断することをおすすめします。

うつ伏せ寝では、首への負担が減る

うつ伏せで寝る人は、枕を使うと首が大きく反り、頚椎や神経を圧迫する可能性があります。
そのため、うつ伏せ寝に限っては、

  • 枕を使わずに寝る
  • ごく薄いタオルを使う

など、低い高さのほうが自然な姿勢を保ちやすく、首の負担が軽くなることがあります。

枕なしで寝るのに向いている人の特徴

すべての人に枕が必須というわけではなく、体の構造や使用している寝具によっては、枕なしで寝る人の方が調子が良いケースがあります。

枕を使わずに寝ても不調を起こしにくいのは、主に次のような人です。

うつ伏せで寝る習慣のある人

普段からうつ伏せの姿勢を好む人は、枕が不要なケースが大半です。
前述したように、うつ伏せ時に枕があると首が過伸展の状態になり、背骨や神経を痛める原因となります。

この姿勢で寝る人は、枕を使わないことで首筋の緊張が緩和され、呼吸もスムーズになる傾向があります。

ただし、うつ伏せ寝自体が肺を圧迫しやすく、また肩や腰に負担をかけやすいといったデメリットもあります。

体の不調や特定の痛みが続く場合は専門家に相談し、寝姿勢の見直しを検討しましょう。

ストレートネックや背骨のカーブが小さい人

背骨のS字カーブが少なく、背中が比較的フラット(平坦)な体型の人は、仰向けになった際に背中と頭の高さに大きな差が生じないケースがあります。

そのため、枕がなくても首に無理な力がかからず、自然に寝やすいと感じる人もいます。

一般的な高さの枕を使うと、「高過ぎて寝にくい」と感じやすい人が該当します。

このように骨格的にフラットに近い人は、枕なし、あるいはタオルを数枚重ねた程度の低い高さが身体に合う場合がある。

柔らかいマットレスを使っている人

使用している寝具が柔らかく、体が沈み込むタイプのマットレスである場合、背中やお尻が深く沈むことで、相対的に頭の位置が高くなります。

これにより、枕を使わなくても首とマットレスの隙間が自然に埋まり、適切な寝姿勢が保たれることがあります。

逆に硬い敷布団の場合は体が沈まないため、首の隙間を埋めるための枕が必要となることが大半です。
寝具全体のバランスによって、枕の必要性は変化することを覚えておくとよいでしょう。

快眠につながる”自分に合った枕”の選び方

枕なしを試しても不調が続く、あるいは自分に合う枕が見つからないという「枕難民」の方は、選び方の基準を見直す必要があります。

実は、高価な枕を買わなくても、自宅にあるタオルを使って高さを調整する方法で代用も可能です。

ここでは、理学療法士が推奨する、身体の負担を減らし快眠を得るための枕選びのポイントを解説します。

① 理想的な寝姿勢を保てる高さを選ぶ

枕選びで最も重要な要素は高さです。
理想的な高さとは、立った時の自然な姿勢を寝ている状態でも再現できるもの程度の高さです。

具体的な高さの目安としては

  • 仰向け:視線がやや下向き
  • 顎が上がりすぎない
  • 首の後ろに隙間ができない

高さが数ミリ変わるだけでも首への負担は大きく変化するため、微調整ができるものを選ぶと良いでしょう。

微調整が難しい場合は、タオルで高さを数ミリ単位で調整する方法が効果的です。

② 寝返りをしても頭が落ちない大きさを選ぶ

人は一晩に20回以上寝返りを打つと言われており、左右に動いても頭が枕から落ちない十分な幅が必要です。

頭3つ分ほどの幅があれば、横向きになっても枕の上に頭を乗せ続けることができます。

小さな枕では、寝返りのたびに無意識に動きを制限してしまったり、頭が落ちて目が覚めたりする原因となります。

ゆとりのあるサイズを選ぶことで、睡眠中の自由な動きを妨げず、筋肉が固まるのを防ぐことができます

③ 首や頭を支える形状に注目する

枕の形状は、頚椎のカーブを優しく埋めてくれるものが推奨されます。
波型や中央がくぼんでいるタイプは、頭を安定させつつ首をサポートする機能に優れています。

ただし、凹凸が激しすぎると寝返りが打ちにくくなることもあるため、購入する際は実際に試してみるのがおすすめです。

その際は、首筋に力が入らず、頭の重みが一点に集中せずに分散されている感覚があるかを確認しましょう。

④ 寝心地・機能性・素材を総合的に判断する

素材は好みが分かれる部分ですが、頭が沈み込みすぎない適度な硬さを持つものが良いでしょう。柔らかすぎる素材は安定感に欠け、首への負担が増す恐れがあります。

一方で、通気性の良いパイプ素材やそば殻などは熱がこもりにくく、夏場でも快適な睡眠環境を作りやすいのがメリットです。

ウレタンやファイバーなど多くの種類があるが、自分がリラックスでき、かつ寝返りがスムーズに行える反発力を持つ素材を選ぶことが快眠への鍵となります。

素材選びの参考:

  • パイプ・そば殻 → 通気性◎
  • ウレタン → 頭が安定しやすい
  • ファイバー系 → 洗えて衛生的

 

まとめ:枕なしで寝るのは誰にでも良いわけではない

枕なしで寝ることは、一部の人にはメリットがありますが、多くの人にとっては首・肩の負担増、睡眠の質低下などデメリットが大きいのが現実です。

まずは、

  • 自分の姿勢
  • 首のカーブ
  • マットレスの柔らかさ

などを踏まえて判断しましょう。

理学療法士として、枕選びのコツを最後にもう一つお伝えします。

それは、いきなり枕を使わずに寝る前に、バスタオルで高さ調整をして“自分に合う高さ”を探す方法です。自宅でできる、最も安全で失敗がない方法です。

正しい寝具選びは、身体の疲れを確実に回復させるための大切な習慣です。
ぜひあなたの身体に合った環境を整え、毎日の睡眠をより快適にしていきましょう。

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投稿者プロフィール

ナガシマカホ
ナガシマカホ
【青山筋膜整体 理学BODY WEB編集長】理学療法士歴10年以上 総合病院⇨介護・予防分野⇨様々な経験を経て独立。臨床で得た知識をもとに、書籍の執筆・WEB発信・セミナー講師など分野問わず活動中。

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