むちうち症(頸椎捻挫)は、交通事故や転倒といった外部からの強い衝撃によって、首に過剰な負荷がかかり発生します。
主な症状は、首の痛みやこり、頭痛、めまいなどの軽度のものから、重症になると腕や肩のしびれ、運動麻痺など多岐にわたります。
重症化を防ぐには、早期の発見、適切なケアが欠かせません。
本記事ではむちうちについて、理学療法士でありながら、全国に80店舗以上の整体を運営するカラダの専門家が、原因から治療・対処法まで、まるっと解説していきます。
目次
むちうち症とは?
むちうち症とは、頚椎(背骨の首の部分)に対して強い衝撃が加わることによって生じる痛みや不調を指します。
実は一般的に言われる「むちうち」は、医療学的には「頚椎捻挫」と言われ、軽症から重症まで症状はさまざまです。
初期には物理的な損傷がなくても、2・3日経ってから症状が遅れて発生することが多いです。
したがって、首の慢性的な痛みを感じた場合、医療機関(整形外科)での受診が推奨されます。
むちうちの原因
むちうちの主な原因は、交通事故などによる急激な衝撃が挙げられます。
具体的には、後ろからの追突や、高所からの転落、スポーツ時の衝突が一般的です。
これらの状況では、頭が急激に前後に揺れ動くため、頚椎や周囲の筋肉、靭帯に大きな負荷がかかります。
また、自転車の転倒や重い荷物を持つ際の不適切な姿勢も原因となることがあります。
軽いむちうちと重症の違い
むちうちには軽いものから重症のものまで様々なタイプがあります。
軽いむちうちは、筋肉や靭帯に軽度の損傷がみられるケースです。
この場合、痛みや動きの制限はあるものの、比較的早く回復することが多いです。
一方、重症のむちうちは神経や骨に影響が及ぶことがあります。
- ズキズキと鋭く強い痛みが続く
- 安静や夜間にも痛みが強い
- 手足の痺れや筋力低下がある(力が入らない)
- 後頭部の痛みが続く
上記の症状が見られる場合は、直ちに医療機関を受診しましょう。
脊椎や神経が損傷されると、その後の治療が長引くことや、慢性的な後遺症が残るリスクも高まるため、早期の適切な治療が欠かせません。
むちうちの症状と合併症
脊椎の周りには筋肉、神経、椎間板など様々な組織が存在しています。
筋肉が損傷することで起こる筋・筋膜性疼痛。
脊柱の間のクッションの役割をしている椎間板が飛び出る椎間板ヘルニア。
神経が損傷することで起こる運動麻痺、感覚麻痺、しびれ、脱力感などの神経症状。
それらが合わさって症状として出現することがほとんどです。
その中でも特に首〜腰、肩や腕にかけての痛みや痺れ、重さを訴える方が多いです。
目の疲れ、かすみ、吐き気、全身の倦怠感といった筋肉や骨以外の不調を訴える方もいます。
このように全身に症状が出現する場合もあり、注意が必要です。
むちうちは損傷している場所と症状によって5つの種類に分類されます。
下の表で説明していきます。
損傷場所 | 症状 | 注意点 | |
頸椎ねんざ型 | 首の関節、筋肉、靱帯 | 首と肩の痛み、こり動きの制限
めまい、頭痛 |
むちうちの7~8割が当てはまる軽い事故でも症状が出現しやすい |
神経根症状型 | 脊髄が枝分かれしてすぐの場所で神経が損傷 | 片方の腕の痛みしびれ
脱力感など |
運動麻痺や感覚麻痺がある場合は精密検査が必要 |
脊髄症状型 | 脊髄が枝分かれする前に脊椎の中で損傷 | 両方の手足の痛みしびれ、脱力感
運動麻痺や感覚障害 歩行障害 排尿や排便の障害 |
一般的にいう脊髄損傷重症な場合は入院
専門的な対応が必須 |
バレー・リュウ症候群型 | 首にある自律神経の異常継続して過剰に緊張している状態 | めまい頭痛
異常な発汗 吐き気 耳鳴りなど |
症状が一定ではないストレスなども関係する |
脳脊髄減少型 | 脳脊髄液という液体が外に漏れる状態 | めまい耳鳴り
吐き気 身体のだるさなど |
医学的にはっきりしていない部分も多いなぜそのような症状が出現するのかは不明な点もあり |
以上のように症状によって型はありますが、自己判断は非常に危険です。
必ずしも上記の症状が出るわけではありません。
気になる症状があればメモ、記録をとるなどして医師や専門の治療機関で相談することも有効でしょう。
交通事故による後遺症とそのリスク
交通事故が原因で生じたむちうちは、後遺症を引き起こすリスクが高いことが知られています。
事故によって初期の治療が不十分だった場合、症状が長引くことがあります。
特に、首や肩の痛みが慢性化してしまうケースが多く、こうなると日常生活や仕事にも影響がでてしまいます。
それだけでなく、趣味やスポーツが続けられなくなるなどの精神的なストレスにもつながってしまいます。
早期に適切な治療を行うことで、後遺症のリスクを軽減することが重要です。
むちうちによるヘルニアの可能性
頚椎や椎間板に影響を及ぼす可能性があり、これがヘルニアのリスクを高めることがあります。
頚椎の神経が圧迫されると、痛みやしびれが背中や手足に広がることがあるため、早期の診断と治療が不可欠です。
ヘルニアは進行すると、激しい痛みや運動障害を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
見過ごさないよう、医療機関での検査を通じて早期に症状を評価し、必要な治療を選択することが大切です。
むちうちの一般的な治療とリハビリテーション
むちうちの治療は、症状の重さや個々の状態に応じて段階的に進められます。
自己判断せず、医療機関での適切な診断を受けることが重要です。
むちうちの一般的な治療
むちうちの治療は、まず痛みや炎症を抑えることが基本となります。
整形外科での診断後、医師が状況を確認し、必要に応じて痛み止めの薬が処方されることもあります。
治療の初期段階では安静が求められるため、装具などで首を固定することもあります。
徐々に、痛みなどの症状の改善が見られた段階で、理学療法士によるリハビリテーションが開始されます。
物理療法や運動療法を通じて、関節の柔軟性や筋力の回復、日常生活への復帰を目指します。
定期的に医師の指導を受けながら、無理のない範囲で体を動かすことが重要です。
むちうちが治るまでの期間
むちうちの安静期間は、通常数日から1週間程度とされています。
この期間中は、過度に動かすことを控える必要があり、特に痛みが強い場合には無理をしないことが求められます。
初期の安静が、症状の悪化を防ぐ役割を果たします。
しかし、長期間の安静が続くと逆に回復が遅れることがあるため、医師の指導に従いつつ症状が安定した段階で、リハビリを取り入れていきます。
個人の状態にもよりますが、大体が3〜6ヶ月で症状が改善すると言われています。
交通事故によるむちうち
交通事故は、むちうちの最も一般的な原因の一つとされています。
特に後方からの追突事故では、身体が急激に前後に揺れ動くため、頚椎や周囲の筋肉に大きな負担がかかります。
この損傷は、初めのうちは軽い痛みであっても、時間が経つにつれて症状が悪化することがあります。
事故後の治療期間と通院の目安
事故後の治療期間は、むちうちの症状の重さや個人差によって異なります。
軽度のむちうちであれば、数週間ほどで改善が見込まれる場合が多いものの、重症例では数ヶ月に渡って通院が必要になることも珍しくありません。
一般的には、症状が改善するまで、定期的な通院を通じて医師の診察を受けることが重要であり、症状の改善をしっかりと確認することが求められます。
通院の間隔や期間については、個別の症状に応じて医師と相談しながら計画を立てることが重要です。
むちうちの3つの対処法とセルフケア
むちうちの3つの対処方法は
- 痛みが強い時は安静
- アイシングや消炎鎮痛剤の使用
- ストレッチ
です。
以下に具体的な方法を説明していきます。
自身の体の状況にあわせて、一緒に適切な対処をしていきましょう。
痛みが強い時は安静
一般的に、痛みが強いときは炎症を伴っている場合が多いです。
対処法として、安静を保ち、炎症を悪化させないことが重要になります。
安静を保つための生活上の注意点を紹介します。
- 痛みが強くなるほどの無理な動きをしない
- 重い物を持たない
- できるだけ体重をかけない
周りの人の助けを借りたり、道具などを使って体に負担がかからない様に工夫して生活しましょう。
どうしても安静に出来ない場合は医師に相談し、固定用装具の処方をお願いしましょう。
アイシングや消炎鎮痛剤の使用
痛みへの対処法はアイシングや消炎鎮痛剤を使用することになります。
アイシングの具体的な方法を紹介します。
アイシングは上手く使用すれば痛みの対処法として有効な手段となります。
しかし、注意点も多い対処法のため行う際はまず、専門機関で相談してから行うようにしてください。
次に消炎鎮痛剤についての注意点です。
消炎鎮痛剤は炎症を抑え、痛みを和らげる薬になります。
市販薬でも消炎鎮痛剤という名前のものはありますが、必ず医師から処方されたものを使用しましょう。
薬は使い方次第で良い作用も悪い作用も受けることになります。
医師、薬剤師の説明をしっかり受け、用法用量を厳守して使用してください。
むちうちにおすすめのストレッチ
むちうちの痛みやこりに有効なストレッチを紹介します。
ストレッチは痛みが強くならない範囲で、無理なく行うことが原則になります。
痛みが強い場合はストレッチで対処しようとせず、安静にし、痛みが続く場合は専門機関に相談しましょう。
むちうちの多くは首の後ろに痛みやこりが起こることが多いです。
頭板状筋という、頭蓋骨の後ろから頸椎につく筋肉のストレッチを紹介します。
【目的】首の痛みやストレートネックの改善
【効果】頭板状筋のストレッチ
【開始肢位】:椅子や床に座って
【方法】
- 左の後頭部に両手を当てる
- 真下に引っ張る
- 目線は右の膝をみる
- 30秒キープする
- 同じように右の後頭部に両手を当てて反対側も行う
むちうちでは痛みから肩甲骨回りも固まりやすくなります。
首に症状がある場合でも肩甲骨を動かすことで症状の改善がみられることがあるため、肩甲骨のストレッチも紹介します。
【目的】肩回りのコリの改善
【効果】肩甲骨のストレッチ
【開始肢位】床や椅子に座った姿勢
【方法】
- 体の正面で肘と肘、手首と手首をくっつける
- くっつけたまま両腕を上に上げる
- 軽く脇の下周辺が伸びるところで30秒止める
日常生活での注意点と予防策
日常生活では、特に姿勢を意識することがむちうちの痛みを予防する鍵となります。
コンピュータ作業時には、モニターの高さを調整して首を無理に曲げないようにすることが重要です。
また、重い荷物を持つ場合は、正しい持ち上げ方を実践し、身体全体を使うよう心掛けるべきでしょう。
運動やスポーツを行う際には、充分なウォームアップを行い、急な動きを避けることで筋肉や靭帯にかかる負担を軽減できます。
これらの注意を通じて、日常生活でのむちうちリスクを減らすことが可能です。
むちうちの痛みや不調を今すぐどうにかしたい人へ
ここまで紹介したセルフケアを行なっても、なかなか不調が改善しない人も多いです。
特に、すでにむちうちの後遺症で悩んでいる人は、セルフケアでは限界があります。
「今すぐむちうちの痛みやだるさをどうにかしたい」という人は一度専門家に相談するのがおすすめです。
実は、なかなか治らないむちうちの後遺症は「筋膜」に問題が出ているケースが意外と多く見られています。
当院は、筋膜の施術に特化した整体で、スタッフ全員が体のプロである理学療法士の国家資格を取得しています。
さらに、当院の施術は医師と理学療法士にしか学ぶことのできない、イタリア式の筋膜リリース(正式名称は、筋膜マニピュレーション)として人気を集めています。
イタリア式の筋膜リリースは特別な技術が必要になる分、普通の筋膜リリースよりも圧倒的に筋膜がほぐれるため、痛みなどの不調を改善できる可能性も高くなります。
最近ではありがたいことに来院される方が急増し、毎月予約が取りづらい状態です。
店舗によっては、来月の予約もいっぱいの状況です…!
当院にて早めに「施術」を検討される方は、ぜひ、お近くの店舗を覗いていただき、予約があるかを確認頂けると幸いです。
投稿者プロフィール
- 【青山筋膜整体 理学BODY WEB編集長】理学療法士歴10年以上 総合病院⇨介護・予防分野⇨様々な経験を経て独立。臨床で得た知識をもとに、書籍の執筆・WEB発信・セミナー講師など分野問わず活動中。
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