腱板断裂とは、肩の関節を安定させるためのインナーマッスルである筋肉(腱板)が傷ついたり、切れたりする状態を指します。
肩の中でも損傷しやすい部位であり、発症すると腕に力が入りにくくなるほか、特に腕を上げる動作で強い痛みが生じるのが特徴です。
痛みの部位や症状が似ていることから、四十肩や五十肩などと間違えてしまうこともあります。
しかし、腱板断裂の場合はとくに、日常生活での何気ない動作が痛みや症状を悪化させることもあるので注意が必要です。
本記事では、理学療法士の視点から、そんな腱板断裂でやってはいけないことや、四十肩・五十肩との見分け方をわかりやすく解説していきます。
ぜひ、参考にしてみてください。
- 痛み・症状の悪化を防ぐための日常生活の注意点
- 五十肩とのちがいと、自己流のケアの危険性
- 腱板断裂かも?と思ったときの初期対応と治療の流れ
五十肩と腱板断裂|決定的なちがいと見分け方
腱板断裂と間違いやすい四十肩・五十肩の決定的な違いは、肩を動かす筋肉の腱が切れているか、それとも肩の周辺組織が炎症や加齢による変性などで硬くなっているかという病態の差にあります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
四十肩や五十肩は、専門的には肩関節周囲炎と呼ばれる疾患です。
加齢に伴い、肩関節を構成する骨、軟骨、靭帯、腱、滑液包(滑りをよくする袋)などが老化(退行性変化)し、炎症や癒着を起こすことが主な要因とされています。
症状としては、どの方向に動かしても痛みが生じることが多く、関節の可動域が全体的に狭くなります。
他人の力で腕を上げてもらおうとしても、関節自体が固まっているため上がらないこともあります。
腱板断裂
腱板断裂は、腕を上げる際に必要なインナーマッスルである腱板が物理的に損傷している状態です。
腱が切れているため、自分の力で腕を持ち上げるのは困難ですが、腕を支えてもらうと上がるのが特徴です。
また、特定の角度で引っかかるような痛みが出たり、夜間にズキズキ痛む夜間痛が強く出たりします。
四十肩・五十肩と腱板断裂の対処法のちがい
五十肩は、痛みが落ち着いたら固まった関節をほぐすために積極的なストレッチが必要です。
しかし、腱板断裂で同じように無理なストレッチを行うと、切れた部分に過度な張力が加わり、断裂の範囲を広げてしまう恐れがあります。
痛みの原因がどちらにあるかによって、良かれと思った運動が逆効果になるため、まずは自身の症状がどちらのタイプに近いかを確認することが大切です。
腱板断裂で絶対にやってはいけないこと5つ
腱板断裂の痛みを悪化させないためには、日常生活における特定の動作を避けることが重要です。
肩に負担をかける動きを無意識に行っている場合が多いため、具体的なNG動作を理解し、意識的に避ける注意点を知っておきましょう。
ここでは、特に注意すべき5つの動作を解説します。
頭より高い位置へ腕を伸ばす
洗濯物を干したり、高い棚の荷物を取ったりする際に、腕を頭より高い位置へ伸ばす動作は注意が必要です。
腕を肩より上に高く上げたとき、肩の屋根にあたる骨の肩峰と、腕の骨の上腕骨の間にある隙間が狭くなります。
この狭い隙間で、すでに傷ついている腱板が繰り返し挟み込まれる現象をインピンジメントと呼びます。
インピンジメントが起こると、断裂部分に過度な摩擦や圧迫が加わり、強い痛みや炎症を引き起こします。
これが繰り返されることで、本来は部分的な断裂であったものが、さらに範囲を広げてしまうリスクもあります。
高い場所での作業が必要な場合は、無理に手を伸ばすのではなく、踏み台を使用するようにしましょう。
また、頻繁に使用するもの(着替えや調理器具など)は手の届く位置に配置しておくのもおすすめです。
不意に腕をひねる
車の後部座席にある荷物を取る、電車のつり革に掴まるといった、不意に腕をひねる動作も腱板に大きな負担をかけるリスクがあります。
腱板は肩のインナーマッスルとして、腕を内側や外側にひねる回旋運動を支える役割を担っています。
そのため、急激なひねりが加わると、すでに損傷している部位に強い牽引力が集中し、症状を悪化させる要因となります。
日常生活では、腕だけで物を取ろうとせず、体の向きを変えるようにして動くことが大切です。不意な動きによるダメージを防ぐことが、断裂の拡大を防ぐことにつながります。
他にも、腕を後ろに回したときに出る痛みついて詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
痛みを我慢して重い荷物を持ち運ぶ
スーパーの買い物袋や段ボールなど、重い荷物を持つことは断裂部を悪化させる直接的な原因になります。
重い物を持つと、腕を支えるために肩周りの筋肉、特に腱板が強く収縮します。
この収縮力が断裂部に直接かかり、さらに断裂を広げてしまうリスクがあります。
買い物の際ややむを得ない場合は、荷物を小分けにしたり、台車を利用したりして、なるべく重さが肩にかからないように工夫しましょう。
痛い方の肩を下にして寝る
特に横向きで寝る際には、痛みのある方を下にする寝方は避けましょう。
腱板断裂の方の中には、夜間の鋭い痛みで困っている人も多いです。そういう場合は特に寝る姿勢を見直すことが重要です。
痛い方の肩を下にすると、自身の体重で断裂部が長時間圧迫され続けます。この圧迫により、肩周辺の血流が悪化し、炎症が強くなることで、夜寝ている間の痛みが増す原因となります。
寝る際は、仰向けで寝るか、痛くない方の肩を下にして横向きになるのが望ましいです。
クッションやタオルを痛い方の腕の下に入れると、さらに負担を軽減できます。
上半身の力で起き上がる
朝、布団やベッドから起き上がる際に、痛い方の腕で体を支えたり、腕の力を使って勢いよく起き上がったりする動作は危険です。
肩関節に急激かつ大きな負担をかけるため、腱板に強いストレスが加わります。結果として、痛みを引き起こしたり、断裂の悪化につながったりする可能性があります。
起き上がる際は、まず痛くない方に一度横向きになってから、ゆっくりと起き上がる習慣をつけましょう。
要注意!手術後のNGセルフケア
腱板断裂の手術後は、特に自己判断でのセルフケアには注意が必要です。
手術で縫合した腱は非常にデリケートな状態であり、完全に修復されるまでには数ヶ月単位の時間を要します。
そのため、術後のリハビリテーションも、まずは他動で動かすことから始めまり、自動運動、動かせる角度を広げるなど、段階的に行います。
回復度合いに合わせて行うため、制限のある時期に「早く治したい」と焦り、自己流のマッサージやストレッチを行うと、縫合した腱に過度な力が加わり、再断裂を引き起こす可能性があります。
手術後は必ず医師や理学療法士の指示に従い、指示された通りのリハビリテーションを慎重に進めることが重要です。
腱板断裂かも…と思った時の対処法
肩に痛みや動かしにくさを感じ、「もしかしたら腱板断裂かもしれない」と不安に思った場合、自己判断で放置したり、誤った対処をしたりするのは避けるべきです。
ここでは、疑いがある場合の適切な初期対応と、その後の治療の流れについて、簡単なチェックポイントを交えながら解説します。
まずは整形外科を受診しよう
肩の痛みが続く場合は、まず整形外科を受診しましょう。
肩の痛みの原因は腱板断裂以外にも様々あるため、専門医による正確な診断が不可欠です。
肩腱板断裂の診断では、問診や身体所見に加えて、レントゲン撮影が行われますが、レントゲンだけでは腱の状態はわからないことがあります。
そのため、超音波(エコー)検査やMRI検査といった画像診断で、腱の断裂の有無や程度を詳細にチェックする必要があります。自己判断せず、必ず専門医に相談してください。
腱板断裂の一般的な治療
腱板断裂の治療は、大きく「保存療法」と「手術療法」の2つに分けられます。
断裂が比較的小さい場合や、ご高齢で手術が困難な場合は、まず保存療法が選択されます。
保存療法には、痛みや炎症を抑えるための安静、湿布や内服薬といった薬物療法、肩関節へのヒアルロン酸注射、そして理学療法士の指導のもとで行うリハビリテーションなどがあります。
保存療法で改善が見られない場合や、断裂が大きく活動性の高い方には、関節鏡を用いた低侵襲な手術療法が検討されます。
術後の日常生活の工夫
手術後の生活で最も注意すべき点は、痛みが消えたからといって、肩の組織が完全に修復されたわけではないという事実です。
手術で縫い合わせた腱板(肩のインナーマッスル)が骨としっかりくっつくまでには時間がかかります。
自己判断で腕を上げたり重い物を持ったりすると、修復した部分が再び切れる再断裂を招く恐れがあるため注意が必要です。
日常生活では、以下の点に気をつけて過ごしましょう。
- 医師から指示された装具(スリングなど)を必ず装着し、無意識の動きから肩を守る
- 許可が出るまでは、重い荷物を持ったり腕を高く上げたりしない
- 寝る際は、クッションを肘の下に置いて肩が後ろに落ちないよう支える
- リハビリは決められた範囲内で行い、無理に可動域を広げようとしない
痛みがないからと過信せず、段階的な回復を意識することが大切です。指示されたルールを厳守し、慎重に生活範囲を広げていきましょう。
術後しばらく経ってもよくならないときは?
手術を受け、リハビリテーションを続けていても痛みが改善しない、あるいは動きが良くならない場合は、遠慮せずに主治医や担当の理学療法士に相談することが重要です。
痛みが続く原因としては、縫合した腱の再断裂、肩関節が硬くなる「拘縮」、炎症の長期化など、さまざまな可能性が考えられます。
肩の痛みがなかなか良くならない場合、専門家に一度みてもらうことで改善に向かうケースが非常に多いです。
当整体院「理学ボディ」でも、「なかなかよくならなかった肩の動きが、たった2回で軽減した..!」など、多くのケースでは「1〜3回以内の施術で痛みが改善」しています。
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当院の施術の特徴や3回以内で痛みの改善ができる秘訣は、「下記の記事(↓)」でわかりやすく解説しています。
関連記事:肩の痛みが改善した事例多数!3回以内の改善にこだわる整体院『理学ボディ』とは?
もちろん、全員が1〜3回の施術で必ず改善するとは断言できません。
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私たちも一人でも多くの方に「痛みから解放される感動」を届けたいと、スタッフ一同、全力で「施術」をさせて頂いています。
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腱板断裂の「やってはいけないこと」に関するよくある質問
腱板断裂と診断された方が抱えやすい「やってはいけないこと」に関する疑問は数多くあります。
安静の度合いやセルフケアの開始時期など、判断に迷う問題も少なくありません。
ここでは、特によく寄せられる質問に、注意点を交えながらお答えします。
腱板断裂と診断されたら、腕は全く動かしてはいけないのでしょうか?
全く動かさない「絶対安静」は、肩関節が固まる「拘縮」を招くリスクがあるため推奨されません。
炎症が強い急性期は安静が第一ですが、痛みが許す範囲で、医師や理学療法士の指導のもと、振り子運動などで適度に動かすことが重要です。
自己判断で動かすのではなく、専門家の指示に従った範囲での運動を心がけてください。
痛みが和らいできたら、自己流でストレッチを始めても大丈夫ですか?
痛みが和らいでも、断裂した腱が完全に治癒したわけではありません。その状態での自己流のストレッチは避けましょう。
不適切なセルフケアは、回復を妨げるだけでなく、再断裂や症状悪化の原因となります。
振り子運動などのリハビリも、正しい方法で行わないと逆効果になるため、必ず医師や理学療法士の専門的な指導のもとで行うことをおすすめします。
腱板断裂は湿布や安静だけで自然に治ることはありますか?
一度断裂してしまった腱が、自然につながって治ることは基本的にありません。湿布や安静はあくまで痛みや炎症を抑えるための対症療法です。
痛みが引くと「治った」と勘違いしがちですが、放置すると断裂が拡大したり、筋肉が痩せて脂肪に変わる「脂肪変性」が進行し、将来的に手術が困難になる可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
腱板断裂は、五十肩とは異なり、無理に動かすことで悪化する可能性がある疾患です。
日常生活においては、腕を頭より高く上げる、重い物を持つ、不意に腕をひねるといった動作を避けることが重要です。
自己判断でのセルフケアは再断裂のリスクを高めるため、必ず専門医の診断を受け、理学療法士など専門家の指導のもとで適切な治療とリハビリを進める必要があります。
この記事で解説した注意点を守り、肩への負担を減らす生活を心がけてください。
投稿者プロフィール

- 理学療法士/WEBメディア編集長
- 10年以上の医療・介護の現場経験を経て独立。著書に6刷を達成した『高齢者のからだ図鑑』など(Gakken出版)。現在は、東京都の高齢福祉事業にも従事。さまざまな現場経験をもとに、執筆・WEB発信・大学での講師業など分野問わず活動中。


木城先生
















