「最近、なぜか何もないところでつまずくようになった」と感じる方へ。
平坦な場所でのつまずきの原因は、足首の硬さや足を上げる筋力の低下などが一般的に考えられます。
また、姿勢や歩き方の崩れによって起こることもあります。
しかし、中には脳の異常や頸椎疾患、パーキンソン病などの重大な病気が隠れていることもあるため、その見極めには注意が注意が必要です。
この記事では、理学療法士の視点から、何もないところでつまずく原因と対策、脳の病気など危険なサインを見分けるポイント、病院を受診する際の目安までをわかりやすく解説します。
何もないところでつまづく原因は?
何もないところでつまずく主な原因は、主に加齢や運動不足による筋力低下や足首の関節の硬さです。
歩く時には、つま先を上げるすねの筋肉「前脛骨筋」だけでなく、足の付け根にある「腸腰筋」や体幹を支える筋肉など、多くの筋肉や関節が連動しています。
この連動がスムーズにいかなくなると、自分では足を上げているつもりでも実際には上がっておらず、わずかな凹凸にも足が引っかか離やすくなることがあります。
人によって、どの筋肉がうまく働いていないのかは異なります。以下の症状に照らし合わせて確認してみましょう。
足を上げる「腸腰筋」の低下
つまずきの直接的な原因として、太ももを持ち上げる「腸腰筋(ちょうようきん)」の筋力低下が挙げられます。
腸腰筋は上半身と下半身をつなぐインナーマッスルで、歩くときに足を前に振り出す重要な役割を担います。
この筋肉が衰えると、歩行時に太ももが十分に上がらなくなり、つま先を上げる力に頼るようになります。
その結果、歩幅が狭くすり足のような歩き方になり、何もない平坦な場所でもつまずきやすくなります。
つま先を上げる「前脛骨筋」の低下
つま先を上げる前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の低下も、つまずきの大きな原因です。
前脛骨筋はすねの前にある筋肉で、歩く時に地面につま先が引っかからないように、つま先を持ち上げる働きをします。
この筋肉が弱まると、つま先が垂れ下がったままになりがちで、カーペットの縁やわずかな床の段差など、これまで気にも留めなかったものでつまずくようになります。
足首の硬さ
足首の関節が硬くなることも、つまずきの原因となります。
歩行時、足首はしなやかに動くことで地面からの衝撃を吸収し、体をスムーズに前へ進める役割を持ちます。
特に、つま先を上げる(背屈)・下げる(底屈)という足関節の動きが重要となります。
ケガや運動不足で足首の動きが硬くなると、つま先を上げる「背屈」の動きが出にくくなることがあります。
その結果、歩行中に足先を上げるのが不十分となり地面に引っかかりやすくなります。
ストレッチなどで足首の柔軟性を保つことは、つまずき予防に不可欠です。
体幹筋力の衰え
つまずきの原因として見落とされがちなのが、腹筋や背筋などの体幹筋力の衰えです。
体幹は、歩行中の姿勢を安定させ、バランスを保つ土台の役割を果たします。
特に40代、50代になると、デスクワーク中心の生活や運動不足により体幹の筋肉が弱まりやすくなります。
体幹が不安定だと、歩行中に体が左右にぶれやすくなり、足の運びが乱れてつまずきにつながります。
一見、足とは関係ないように思えますが、安定した歩行には体幹が安定してることが大切です。
何もないところでつまずく|病気の可能性
何もないところでつまずくようになった場合、単なる筋力低下だけでなく、神経や脳に関わる病気が原因である可能性もあります。
特に、急に足先に力が入らなくなった、痺れを伴う、つまずき以外にも体の異変を感じるという場合には注意が必要です。
ここでは、つまずきの背景に隠れている可能性のある代表的な病気について解説します。
脳梗塞などの危険なサイン
つまずきやすくなる原因が、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害のサインである場合があります。
脳の血管が詰まったり破れたりすることで、手足の動きを指令する神経細胞がダメージを受けることがあります。
その結果、片側の手足に麻痺やしびれが起きたり、力が入らなくなったりします。
もし「片足だけが頻繁につまずく」「ろれつが回らない」「物が二重に見える」といった症状が伴う場合は、緊急を要する危険なサインかもしれません。
頚椎症や頚髄症
首の骨(頚椎)の変形によって神経が圧迫される頚椎症や頚髄症も、つまずきの原因となり得ます。
背骨の中には、脳から手足へ運動の指令を伝える重要な神経の束(脊髄)が通っています。
加齢などにより頚椎が変形してこの脊髄を圧迫すると、手足のしびれや動かしにくさ(麻痺)、歩行障害が現れます。
これを「痙性歩行」と呼び、足が突っ張ってしまい、つまずきやすくなるのが特徴です。
上を向いたり、特定の動きで首が痛くなる場合は、要注意です。
パーキンソン病の可能性も
一見関係ないように見えますが、パーキンソン病もつまずきを引き起こす病気の一つです。
パーキンソン病は、脳の神経伝達物質であるドパミンが減少することで、体の動きがスムーズでなくなる病気です。
初期症状として、歩行時に足がすくんで最初の一歩が出にくくなる「すくみ足」や、歩幅が極端に狭くなる「小刻み歩行」が現れることがあります。
また、安静時の手の震えや、筋肉のこわばりも特徴的な症状です。
病気が疑われる場合はセルフケアでの改善は難しいため、適切な対策を講じることが重要です。
つまずき予防におすすめの対処法【理学療法士監修】
つまずきの原因が、筋力の低下や足関節の硬さである場合には、ストレッチや筋トレなどの日々のセルフケアで予防・改善が期待できます。
ここでは、誰でも簡単に自宅で行えるセルフケアの方法を理学療法士の視点で紹介します。
無理のない範囲で、日々の習慣に取り入れていきましょう。
足首のストレッチ
歩行をスムーズにするためには、足首の柔軟性が欠かせません。
硬くなった足首をほぐし、可動域を広げるためのストレッチを毎日の習慣に取り入れましょう。
- 椅子に座り、片方の足首をもう片方の膝の上に乗せる。
- 乗せた足のつま先を手で持ち、つま先を上げる・下げる方向にそれぞれゆっくりと動かす。
- 足首を内外にゆっくりと大きく回す。
- 各動作を20秒ずつ、気持ち良いと感じる範囲で行い、反対側も同様に行う。
もも上げトレーニング
足をしっかり上げるために重要な腸腰筋を鍛える筋トレです。
特に、歩く時にすり足になる、歩幅が小さくなるクセがある人にはおすすめです。
- 壁や椅子の背もたれに手を添えて、姿勢をまっすぐに保つ。
- 片方の膝を、腰の高さまでゆっくりと引き上げる。
- 上げた状態で2〜3秒キープし、ゆっくりと下ろす。
- 左右交互に10回ずつを1セットとし、1日2〜3セットを目安に行う。
体幹・おしりのトレーニング
歩く時のふらつきを防ぎ、姿勢を安定させるためにお尻や体幹の筋肉を鍛えるトレーニングです。
- 仰向けに寝て、両膝を90度に曲げる。
両腕は体の横に置く。 - お尻をゆっくりと持ち上げ、肩から膝までが一直線になるようにする。
- その状態で5秒キープし、ゆっくりと下ろす。この動作を10回繰り返す。
歩き方の見直し
つまずきやすい人の歩き方に多く見られるのが「小股」「すり足」「内股歩き」といった特徴です。
特に膝下ばかりで歩くようになると、股関節の動きが小さくなり躓きやすくなります。
下記のポイントを見直し、歩き方を意識することも重要な対策です。ぜひ、参考にしてみてください。
視線を上げる:足元ばかり見ず、少し前方に視線を向ける。
- 足の付け根から踏み出す:つま先が引っかかる時は、太ももを上げるように少し大きく踏み出す。
- かかとから着地:歩く際は、つま先からではなく、かかとから着地することを意識する。
- 少し大股で歩く意識で:歩幅を少し広げることで、すり足やつまずきを防ぐ。
- 腕を振る:腕を軽く振ることで、歩行のリズムが生まれ、足が前に出やすくなる。
歩いていて靴の内側がすり減る人や、土踏まずが痛くなる人は、それぞれの対処法の記事ものぞいてみてください。
こんな時は病院へ!症状と受診先
セルフケアを行ってもつまずきが改善しない場合や、特定の症状が見られる場合は、病気が隠れている可能性があるため医療機関の受診を検討すべきです。
しかし、どの診療科に行けばよいか迷うことも少なくありません。
ここでは、症状に応じた適切な受診先を紹介します。
自己判断で放置せず、専門医に相談することで、原因を正確に突き止め、適切な治療につなげることができます。
しびれや麻痺、ろれつが回らない場合はすぐに「脳神経外科」へ
つまずきと同時に、体の片側に力が入らない、しびれを感じる、言葉がうまく話せない(ろれつが回らない)、激しい頭痛があるといった症状が現れた場合は、脳梗塞や脳出血など、脳の病気が強く疑われます。
これらの症状は一刻を争う緊急事態です。救急車を要請するか、すぐに脳神経外科や神経内科を受診してください。
早期の対応が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。
首や腰の痛みを伴うつまずきは「整形外科」に相談
つまずきに加えて、首、背中、腰の痛みや、手足のしびれが慢性的に続く場合は、頚椎症や腰部脊柱管狭窄症など、背骨(脊椎)に原因がある可能性が考えられます。
これらは、骨の変形によって神経が圧迫されることで症状を引き起こしてしまいます。
まずは、骨や神経の専門である整形外科を受診し、レントゲンやMRIなどの検査で正確な原因を調べてもらうことが重要です。
よくある質問【Q&A】
ここでは、「何もないところでつまずくようになった」という悩みに関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
ご自身の状況と照らし合わせながら、不安の解消にお役立てください。
何もないところでつまづくのは、老化現象もありますか?
はい、老化現象の一つと考えられます。
加齢に伴い、足を上げる筋力(腸腰筋など)や体のバランスを保つ能力が低下するため、何もないところでつまずくようになります。
特に高齢者では、視力低下も相まって転倒のリスクが高まるため、日頃からの運動が原因の進行を緩やかにします。
つまずきを予防するために、日常生活で簡単にできることはありますか?
日常生活での小さな工夫が有効な対策となります。
例えば、家の中ではスリッパの代わりに滑りにくく踵が固定されるルームシューズを履く、意識的に階段を使う、歩く際に少し大股でかかとから着地するなどです。
これらを習慣にすることで、自然と筋力やバランス感覚が養われます。
片足だけが頻繁につまずく場合、特別な原因が考えられますか?
片足だけが頻繁につまずく場合、左右の筋力バランスの崩れが主な原因ですが、注意が必要です。
脳梗塞や椎間板ヘルニアなど、体の片側に症状が現れる神経系の病気の初期症状である可能性も否定できません。
しびれや力の入りにくさを伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。
何もないところでつまづく【まとめ】
何もないところでつまずくようになった場合、その原因は加齢や運動不足による筋力低下や柔軟性の低下が一般的です。
この記事で紹介した対策(ストレッチや筋トレ、歩き方の見直し)を実践することで、多くは改善が期待できます。
しかし、しびれや麻痺、ろれつの回らなさといった症状を伴う場合は、脳の病気など重篤な疾患のサインかもしれません。
その際は、迷わず専門の医療機関を受診してください。
自身の体の状態を正しく把握し、適切な対処を行うことが、健康な歩行を維持するために重要です。
投稿者プロフィール

- 理学療法士/WEBメディア編集長
- 10年以上の医療・介護の現場経験を経て独立。著書に6刷を達成した『高齢者のからだ図鑑』など(Gakken出版)。現在は、東京都の高齢福祉事業にも従事。さまざまな現場経験をもとに、執筆・WEB発信・大学での講師業など分野問わず活動中。


木城先生


















・つまずきを引き起こす筋力低下や身体機能の変化
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