四十代以降になると多くの人が経験する肩の痛み、いわゆる五十肩。
その正式名称は「肩関節周囲炎」といい、肩関節の周辺組織に炎症が起きて痛みや動きの制限が生じる状態を指します。
軽傷の場合は自然に治癒することもありますが、なかには対処法を誤って症状を悪化させたり、肩の動きにくさが後遺症としてのこってしまうこともあります。
この記事では、からだの専門家である理学療法士の視点で、五十肩の症状の時期ごとに「やってはいけないこと」を解説し、適切なセルフケアや専門的な治療を紹介します。
目次
まずは結論から!五十肩で絶対にやってはいけない5つのこと
「五十肩かも……」と感じたら、まずは症状の悪化を防ぐためにも「やってはいけないこと」を理解しておくことが重要です。
まず、痛みが強い急性期には、無理に動かすことを避け、安静にすることが重要です。この時期に無理な動きをすると炎症を悪化させる可能性があります。
また、自己判断によるマッサージは避けるべきです。
そして、睡眠時には痛い方の肩を下にして寝ないように注意し、痛みを増長させないようにしましょう。
一方で、痛みが和らいだ拘縮期には、安静にしすぎると関節が固まってしまうことがあります。この時期は、無理に動かすのではなく、適度に動かすことが大切です。
【時期別】あなたの五十肩はどの段階?3つのフェーズを簡単チェック
五十肩の症状は、進行度によって「急性期(炎症期)」「拘縮期(慢性期)」「回復期」の3つのフェーズに分けられます。
それぞれの時期で適切な対処法が異なるため、まずは自分の症状がどの段階にあるのかをセルフチェックすることが重要です。
- 痛みの種類(ズキズキ、ジーン)
- 痛むタイミング(安静時、夜間、動かした時)
- 肩の動かせる範囲など
を基準に正しく判断をしていきましょう。
フェーズ1:急性期(炎症期)|ズキズキとした激しい痛みで腕を動かせない時期
急性期は、肩関節に炎症が起きている時期で、突然激しい痛みに襲われるのが特徴です。安静にしていてもズキズキと痛み、特に夜間に痛みが強まって目が覚めることもあります。
炎症によって腕がほとんど上がらない、後ろに回せないなど、あらゆる方向への動きが強く制限されます。
無理に動かそうとすると激痛が走り、関節がロックされたように感じられることも少なくありません。
この時期は発症から2週間〜1ヶ月ほど続くことがあります。
フェーズ2:拘縮期(慢性期)|痛みは和らぐが肩が固まって動かない時期
拘縮期に入ると、急性期のような激しい痛みは徐々に和らぎます。
炎症の影響で肩関節の組織が硬くなり、癒着を起こすことで肩の動きが著しく制限される時期です。
痛みは軽減するものの、「腕が上がらない」「背中に手が回らない」といった状態が続き、日常生活の動作に支障が出ます。
この関節が固まった状態は、数ヶ月から半年以上続くこともあります。
フェーズ3:回復期|少しずつ肩の動きがスムーズになってくる時期
回復期は、固まっていた肩関節の動きが少しずつ改善してくる時期です。痛みはさらに軽減し、動かせる範囲(可動域)が徐々に広がっていきます。
拘縮期に固まってしまった組織がほぐれ、日常生活での支障も少なくなります。
その後、多くの場合は完治に向かいますが、回復までには個人差が大きく、一般的には発症から半年から1年、人によってはそれ以上かかることもあります。
適切なリハビリを行うことで、回復を早めることが期待できます。
【急性期】痛みが最も強い時期にやってはいけないこと
急性期は、肩関節の炎症が最も強い時期です。
この時期の過ごし方を間違えると、炎症を悪化させ、その後の回復を長引かせる原因になります。
基本的には、痛みを引き起こす動作を避け、肩を安静に保つことが最優先です。
良かれと思って行ったことが逆効果になる可能性が高いため、正しい知識を持って慎重に行動しなくてはなりません。
痛みを我慢して無理に肩を動かすこと
「動かさないと固まってしまう」という情報を鵜呑みにして、痛みを我慢して無理に肩を動かすのは絶対に避けるべきです。
急性期に肩を動かすと、炎症を起こしている組織をさらに傷つけ、症状を悪化させる危険性があります。
痛みは体からの危険信号であり、それを無視して動かす行為は回復を遅らせる原因になります。
この時期は、痛みのない範囲で日常生活を送ることを心がけ、無理な動作は控えましょう。
自己判断によるマッサージやストレッチ
痛みがある部分を揉みほぐしたくなりますが、急性期における自己判断でのマッサージやストレッチは非常に危険です。
炎症が起きている部分に外部から強い刺激を加えると、炎症反応がさらに広がり、痛みを増強させてしまいます。
専門知識のないマッサージや、無理なストレッチは、組織の損傷を拡大させるリスクがあるため、絶対にやめましょう。
ケアを行う場合は、まず、医師や理学療法士の指導のもとで行う必要があります。
痛い方の肩を下にして寝ること
睡眠中に無意識のうちに痛い方の肩を下にして寝てしまうと、患部が圧迫されて血行が悪化し、痛みが強くなる原因となります。
また、寝返りを打った際に激痛で目が覚めてしまうことも少なくありません。これを避けるためには、痛い方の肩を上にして横向きになるか、仰向けで寝るのが基本です。
クッションやタオルをうまく使い、肩や腕が楽になる姿勢を見つける工夫が求められます。
寝起きに肩が痛い場合の対処法については「寝起きに肩が痛い原因と対処法」で詳しく紹介しています。
炎症が起きている患部を温めること
急性期のように炎症が強く、ズキズキと熱感を持っている場合に患部を温めるのは逆効果です。
温めることで血行が促進され、炎症反応がさらに活発になり、腫れや痛みを増強させてしまいます。
この時期は、温めるのではなく、アイスパックや氷のうなどで15分程度冷やすのが適切です。
ただし、冷やしすぎは凍傷のリスクがあるため注意が必要です。
【拘縮期・回復期】肩の動きを改善する時期の注意点
急性期の激しい痛みが和らぎ、拘縮期や回復期に入ったら、肩関節の動きが硬くならないよう、少しずつ動かしていく段階に移ります。
この時期は、医師や理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行うことが重要です。
動かし始めるタイミングや強度を間違えると、症状が後退してしまう可能性もあるため、いくつかの注意点を守る必要があります。
肩をまったく動かさずに、安静にしすぎること
痛みが和らいだからといって、肩をまったく動かさずに安静にしすぎると、関節周囲の組織の癒着が進行し、肩関節の動きが制限されたままとなってしまいます。
一度動きが狭まってしまった関節の動きを取り戻すには、多くの時間と労力が必要です。
拘縮期に入ったら、痛みが出ない範囲で意識的に肩を動かし始めることが、可動域を回復させるために不可欠です。
振り子運動など、肩に負担の少ない運動から始めましょう。
痛みがぶり返すほどの激しい運動やリハビリ
早く治したいという焦りから、痛みがぶり返すほどの激しい運動やリハビリを行うのは禁物です。
無理な運動は、治まりかけていた炎症を再燃させたり、筋肉や腱を傷つけたりする原因となります。
運動の目安は、「少し突っ張るけれど、痛気持ちいい」と感じる程度です。
運動後に強い痛みが残る場合は、明らかにやりすぎのサインなので、運動の強度や頻度を見直す必要があります。
重い荷物を急に持ち上げること
肩の痛みが楽になってくると、つい以前と同じように荷物を持ってしまいがちですが、注意が必要です。
特に、回復期の肩関節はまだ不安定な状態にあり、重い荷物を急に持ち上げるような動作は、肩に大きな負担をかけます。
予期せぬ負荷によって、回復しかけていた組織を再び痛めてしまうリスクがあるため、買い物袋やカバンなどは痛くない方の手で持つ、あるいは両手で支えるなどの工夫をしましょう。
腕の付け根が痛い原因や対処法については「腕の付け根の痛みの原因と対処法」で詳しく紹介しています。
日常生活で要注意!五十肩を悪化させるNG習慣
五十肩の症状は、治療だけでなく日常生活の何気ない習慣によっても悪化することがあります。
特に、血行不良や筋肉の緊張を引き起こすような習慣は、痛みを長引かせ、回復を妨げる原因になり得ます。
自身の生活習慣を見直し、肩に負担をかける要因を取り除くことが大切です。以下に挙げるNG習慣に心当たりがないか、チェックしてみましょう。
長時間のデスクワークで同じ姿勢を続けること
長時間のデスクワークで前かがみの同じ姿勢を続けると、首から肩、背中にかけての筋肉が常に緊張した状態になります。
この緊張が血行不良を引き起こし、肩周りの組織が硬くなることで五十肩の症状を悪化させる一因です。
特に、猫背の姿勢は肩関節に大きな負担をかけます。
定期的に休憩を取り、肩を回したり、縮こまった胸周りをゆっくり伸ばすストレッチを取り入れ、筋肉の緊張をリセットすることが重要です。
体を冷やして血行を悪くしてしまうこと
体が冷えると、血管が収縮して血行が悪くなります。
血行不良は筋肉を硬くし、痛みの物質が滞りやすくなるため、五十肩の症状を悪化させる要因です。
特に夏場の冷房が効いた室内や、冬場の寒さには注意が必要です。
服装を工夫して肩周りを冷やさないようにする、温かい飲み物を摂る、シャワーだけでなく湯船に浸かって体を芯から温めるなど、血行を促進する習慣を心がけましょう。
痛みの原因を自己判断で放置すること
肩の痛みを「ただの五十肩だろう」と自己判断で放置するのは危険です。
肩の痛みを引き起こす病気は、五十肩以外にも腱板断裂や石灰性腱炎など、異なる治療が必要なものが存在します。
これらの病気を見逃して放置すると、症状が悪化し、手術が必要になるケースもあります。
痛みが続く場合や、急に激しい痛みが生じた場合は、自己判断せず、必ず整形外科などの専門医を受診して正確な診断を受けることが重要です。
肩の付け根がズキズキ痛む原因や対処法については「肩の付け根のズキズキ痛の原因と対処法」で詳しく紹介しています。
五十肩の痛みを和らげるための【おすすめセルフケア】
専門的な治療と並行して、自宅でできるセルフケアを正しく行うことで、五十肩の痛みを和らげ、回復をサポートすることができます。
ただし、セルフケアは症状の時期に合わせて内容を変えることが重要です。
急性期は安静を基本とし、痛みが和らぐ拘縮期以降は適度な運動を取り入れるなど、自分の状態に合わせたケアを実践しましょう。
急性期は安静を保ち、楽な姿勢を見つける
炎症が強く痛みが激しい急性期は、無理に動かさず安静にすることが最も重要です。
痛みを誘発する動作は避け、肩への負担を最小限に抑えましょう。
座っている時や寝ている時にクッションやタオルを腕の下に挟み、肩が最も楽になる角度や高さを見つけることで、痛みを和らげることができます。
拘縮期以降:無理なくできる【振り子運動】
激しい痛みが落ち着いた拘縮期以降は、肩関節が固まってしまうのを防ぐため、少しずつ運動を始めることが推奨されます。
代表的な運動が「振り子運動(コッドマン体操)」です。
- 痛くない方の手でテーブルなどに手をつき、少し前かがみになります。
- 痛い方の腕は力を抜いてだらりと下げます。
- 下げた腕を振り子のように前後左右に小さく揺らしたり、円を描くように回したりします。
痛みを感じない、ごく小さな動きから始めましょう。
理学療法士おすすめのストレッチ3選【動画で解説】
痛みが落ち着いてきたら、すこしずつ肩まわりの動きに必要な柔軟性を取り戻していきましょう。
特に、五十肩で硬くなりやすい胸まわり、肩を外に開く動きのストレッチを動画で紹介します。
痛みのない範囲で、無理なく実践してみましょう。
- 肩の高さで壁に手をつき、体を反対方向に捻る
- そのまま胸の前が伸びているのを感じながら30秒キープ
肘を曲げて壁にうでをつけても痛みがない場合は、下記の方法で行うと、より胸の筋肉を伸ばすことができます。
- 腕を上げて肘の内側〜前腕を壁につける
- からだを反対方向に捻る
- 胸が伸びているのを感じながら30秒キープ
- 壁の前に立ち、腕を体につけたまま肘を曲げ壁に手のひらをつける
- からだを反対方向に捻る
- 肘が開かないように注意し、20〜30秒キープ
※いずれも、痛みのない範囲でおこないましょう。
就寝時にタオルやクッションで肩の高さを調整する
夜間の痛みは睡眠の質を大きく低下させます。楽な寝姿勢を見つけるために、タオルやクッションを積極的に活用しましょう。
仰向けで寝る場合は、痛い方の腕の下に折りたたんだタオルやクッションを置いて少し高さを出すと、肩関節が安定し痛みが和らぐことがあります。
横向きで寝る場合は、痛い方を上にし、抱き枕などを抱えるようにして腕を乗せると、肩への負担が軽減されます。
自己判断は危険!五十肩の症状を感じたら専門医へ相談を
肩の痛みが続く場合、自己判断で「五十肩だから、そのうち治るだろう」と放置するのは避けるべきです。
肩の痛みには他の病気が隠れている可能性もあります。さらに、適切な治療を受けなければ症状が長引いたり、後遺症が残ったりするリスクもあります。
違和感を感じたら、まずは整形外科などの専門医を受診し、正確な診断を受けることが、重要です。
五十肩を放置すると後遺症が残るリスク
五十肩は自然に治ることも多い疾患ですが、適切なケアをせずに放置した場合、肩の動きが完全には元に戻らない「可動域制限」という後遺症が残ることがあります。
特に、拘縮期に肩を動かさなさすぎると、関節の癒着が固定化してしまう可能性があります。
日常生活に支障が残ることもあるため、痛みが引いた後も動きの悪さが改善しない場合は、速やかに専門医に相談することが重要です。
整形外科で受けられる専門的な治療法
整形外科では、症状の時期や重症度に合わせて様々な治療が行われます。
痛みが強い時期には、消炎鎮痛剤などの薬の処方や、炎症を抑えるためのステロイド注射、ヒアルロン酸注射などが行われます。
また、超音波(エコー)を用いて関節の状態を正確に把握し、的確な治療を選択します。
痛みが落ち着いてきたら、理学療法士の指導のもとで、関節の可動域を広げるための運動療法や、温熱療法などの物理療法を組み合わせたリハビリテーションを進めていきます。
五十肩 やってはいけないこと【よくある質問】
ここでは、五十肩の「やってはいけないこと」に関して、多くの方が疑問に思う点について解説します。
Q. 五十肩の痛みがあるとき、お風呂で温めても大丈夫ですか?
急性期でズキズキと痛み、熱感がある場合は温めるのを避けてください。炎症が悪化する可能性があります。
痛みが和らぎ、肩の動きが悪くなってきた拘縮期以降は、入浴で温めることで血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれるため効果的です。
Q. 痛みが楽になってきたら、いつから運動を再開できますか?
急性期の激しい痛みが治まり、肩の固さが主症状になった時期から再開できます。
ただし、自己判断で始めるのではなく、医師や理学療法士の指導を受けることが望ましいです。痛みを感じない範囲で、軽い運動から少しずつ始めましょう。
Q. 五十肩の夜間痛で眠れないときの対処法はありますか?
痛い方の肩を上にし、抱き枕やクッションで腕や肩を支えて楽な姿勢を見つけるのが基本です。バスタオルを背中に当てて少し体を傾ける方法もあります。
痛みが強い場合は、就寝前に医師から処方された痛み止めを服用することも有効です。
当院では肩の痛みが1〜3回で改善しています
ここまで、記事をお読みいただきありがとうございました。
最後に、改めて、一番大事なことをお伝えします。
それは、あなたの肩の痛みは、セルフケアでは限界となっている可能性が高いということです。
実際に、五十肩の痛みがなかなか治らない人は、専門家に一度みてもらうことで改善に向かうケースが非常に多いです。
当整体院「理学ボディ」でも、「なかなか治らなかった痛みが、たった2回で軽減した..!」など、
多くのケースでは「1〜3回以内の施術で痛みが改善」しています。
当院の施術の特徴や3回以内で痛みの改善ができる秘訣は、
「下記の記事(↓)」でわかりやすく解説しています。
関連記事:肩の痛みが改善した事例多数!3回以内の改善にこだわる整体院『理学ボディ』とは?
もちろん、全員が1〜3回の施術で必ず改善するとは断言できません。
しかし、肩の痛みが治らないケースこそ、当整体院の筋膜リリースが有効だったお客様は非常に多く、
私たちも一人でも多くの方に「痛みから解放される感動」を届けたいと、スタッフ一同、全力で「施術」をさせて頂いています。
最近、当院は、ありがたいことに来院される方が増え、毎月予約が取りづらい状態です。
店舗によっては、来月の予約もいっぱいの状況です…!
そのため、当院にて早めに「施術」を検討される方は、ぜひ、お近くの店舗を覗いていただき、予約があるかを確認頂けると幸いです。
まとめ
五十肩は、四十代から60代、特に閉経前後の女性に多く見られる症状ですが、適切な対処法を知らないと回復が遅れたり、後遺症が残ったりする可能性があります。
重要なのは、急性期・拘縮期・回復期という自分の症状のフェーズを把握し、それぞれの時期に合った「やってはいけないこと」を避けることです。
痛みが強い時期は安静にし、痛みが和らいだら無理のない範囲で動かし始めるという原則を守り、日常生活の習慣を見直すことが回復への近道です。
症状が改善しない場合は、自己判断で放置せず、必ず専門医に相談してください。
投稿者プロフィール

- 理学療法士/WEBメディア編集長
- 10年以上の医療・介護の現場経験を経て独立。著書に6刷を達成した『高齢者のからだ図鑑』など(Gakken出版)。現在は、東京都の高齢福祉事業にも従事。さまざまな現場経験をもとに、執筆・WEB発信・大学での講師業など分野問わず活動中。


木城先生















